ソフトウェア業の複数要素取引における売上高の計上
現状及び問題点
一つの契約中に、システムの要求定義・開発作業・データ移行・メンテナンスなどの複数のサービス要素が
含まれている場合があります。
当該ケースでは、
@ システム一式として契約し個々の内訳を明示しないケースや
A システムの無償バージョンパックなど実質的に多額の値引きを行うケースがあります。
この場合、サービス要素ごとの配分額を操作することによって、売上高を意図的に変更することも可能となります。
そのため、サービス要素ごとの金額について、客観的な説明ができない場合には、適切な売上計上を疑われる可能性
があります。
複数要素を含む契約のあり方と売上金額の検討がポイントとなります。
会計基準による対応
一つの契約の中に、ソフトウェアの開発・教育・販売等、複数の要素が含まれている場合に
「一式契約」や「出精値引」といったケースが見受けられます。
このような「一式契約」の場合には、恣意的に各要素への金額を配分し、売上高の意図的な操作が可能であるため、
金額配分方法等の基準を明確にし、売上計上における恣意性を排除する必要があります。
具体的には、次のような点で会計基準において明確化することが望ましいです。
1.各要素の公正価値の算定
@ 時価がある場合:正味実現可能価額もしくは再調達価額
A 時価がない場合:コストの積み上げ計算をもとに公正価値を算定する方法と、
類似の成果物の取引価格をもとに公正価値を算定する方法等いくつかの算定方法がある。
※ ただし、受託開発型のソフトウェアについて、客観的に説明可能な公正価値を求めることは
技術的困難性を伴うとともに、実務面での煩雑さが懸念される。
従って、著しく合理性を欠いた金額(著しく廉価、もしくは無償)による契約締結では無い限り、
ユーザーと合意した個別の金額を公正価値とみなすことが現実的な対応ではないかと思われます。
2.具体的な対応
@ 契約書での個別金額の明示(無償作業についても実施内容について記載が必要)。
A 契約書の個別金額に、公正価値と乖離した要素が含まれる場合には、原則として
各要素の公正価値によって契約総額を按分し、計上すべき売上金額を決定する。
B ただし、契約書の個別金額が上記按分計算の結果を上回る場合には、
ユーザーとの合意額以上に売上を計上することになる。
そのため、このような場合には契約書の個別金額によって売上を計上すべきである。
C 無償の役務提供がある場合には、
役務完了時まで、無償の役務提供に見合った売上計上を遅延させることになる。
内部統制での対応
1.一式契約の禁止
@ 原則として一式契約を禁止する。
A 例外的に、一式契約を締結する場合には、社内の承認を得るとともに、合理的な説明ができるよう、
個々の金額内訳についてのドキュメントを残す。
2.モニタリングの実施
契約書をレビューし、未承認の一式契約が締結されていないことを確かめる。
ユーザにおける対応
1. 契約締結時に、個々の要素ごとに個別の価格が明示されていることを確認する。
2. リース契約によって、設置調整費等を含めた情報システムの「一式契約」を締結するなど、
リース契約に馴染まない費目が混在しないよう、個々のリース資産の内訳をチェックする。
リース契約の締結についても内部統制が機能するようチェック体制の構築が必要。
3.取引慣行・技術的な側面での対応
ベンダー・ユーザー双方における一式契約の禁止。
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ナビゲーション ソフトウェア業の複合的事象について記載しております。足立区北千住の山田一成税理士事務所。