ソフトウェア業の不適切な契約の分割
現状及び問題点
1.ソフトウェア情報サービスにおいては、請負リスクを限定するために契約を分割することがみられるが、
分割した契約が一つの請負単位を成していないケースや支払条件が一連の契約終了後に一括払いになっているケース
など、個々の契約が独立していないと見られる取引があります。
2.実際の作業完了と関係なく、ユーザーの事情によって検収書が発行されることがある。
このような取引はユーザーにおける適正な資産計上を逸脱していると考えられ、
ベンダーにとっても不適切な収益の計上となるおそれがあります。
分割契約のあり方と適正な分割売上が検討のポイントとなります。
会計基準による対応・内部統制での対応
1.分割した契約が一つの請負単位を形成していないケースや、関連する契約が全て終了した後で支払いが一括で
行われるケースのように、取引が個々に独立していないと思われるような契約の分割があります。
このような不適切な契約の分割に基づいて売上が計上されることを防ぐためには、
適切な契約の分割と対応する売上高の計上についての考え方について、会計基準の中で明示されることが求められます。
2. 具体的には、適切な契約単位については次のような点についての明示が必要となります。
@ 検収の単位として独立している。
→ 工程は細かい区切りではなく、「詳細設計」、「基本設計」、「コーディング」、「テスト」
といったようなある程度大きな区切りが実務的である。
A 分割単位に検収が行われ、引渡しが完了する。
B 契約書がそれぞれ分かれている、もしくは1つの契約書であっても分割単位が明確となっており、
かつ分割検収の定めが記載されている。
C 後工程の契約や作業が解除された場合でも、前工程の契約や支払いが影響を受けない。
D アフターコストについても、契約ごとに瑕疵担保期間が開始し、負うべき責任内容についても独立している。
E 支払いは各検収単位で行われる。
3.内部統制での対応
受注審査の徹底 → 分割単位の独立性を検討した上での契約の締結する。
ユーザーにおける対応
1.分割契約における契約単位ごとの支払を徹底
(関連するすべての契約完了後の一括支払は一種のファイナンス取引である)。
2.ユーザーの予算都合による分割契約、分割検収は、ユーザーにおいてはソフトウェアの不適切な取得に
つながることが少なくないため、ユーザー側においても内部管理体制を監督強化していくことが必要。
3.検収担当者を発注担当者と分離し、以下の手続きを実施する。
@ 「契約書」と「納品書」,「仕様書」,「稼動報告書」,「テスト結果報告書」等の照合。
A 分割契約の妥当性の確認(成果物として機能する単位か否か等)。
4.内部監査の実施
取得したソフトウェアとその稼働状況のチェックを行い分割検収の妥当性を確認
(成果物として機能する単位か否か等)。
取引慣行・技術的な側面での対応
1.ユーザーとベンダー双方が、分割単位の合理性を適切に認識する
2.ユーザーの予算都合等による不適切な分割契約、分割検収依頼に対し、ベンダーは明確に拒否するべきである。
3.プロジェクトマネジメント、コントラクトマネジメントといった管理手法、あるいは、
ソフトウェアエンジニアリングといった工学的な取組みを、ユーザー及びベンダーが「協働」して積極的に取組み、
お互いの熟度を高めていくことが必要である。
4.分割契約によるユーザーのメリット
大規模プロジェクトについては、作業をサブプロジェクトや複数工程に細分化し、
それぞれの細分化した単位で要件を定義し、その都度、契約を締結することによって、ユーザーにおいても、
要件定義の明確化や、意思決定の迅速化につながるというメリットがある。
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ナビゲーション ソフトウェア業の不適切な契約の分割について記載しております。足立区北千住の山田一成税理士事務所。