ソフトウェアを巡る新たな取引の発生
ソフトウェアを巡る新たな取引の発生の現状及び問題点
1. ソフトウェアについては、「研究開発費等に係る会計基準」が存在しております。
当該会計基準に従った会計処理が求められています。
「資産性の判断」や、「効果の判断」などについては、
会計基準を適用する際の解釈や判断が恣意的になりやすいとの指摘があります。
会計基準の策定時には想定されていなかったような新たな形態の取引も発生しています。
このようなケースにおける会計処理の実務は各社の判断に委ねられているのが現状です。
2. 各社によって会計処理が異なるために、
企業間の比較可能性を損なうおそれがあるものは次のような取引があります。
@ 市場販売目的ソフトウェア(ソフトウェアプロダクト)
「設計」「開発」「β版」作成までは会計基準に従って費用化されてします。
「β版」完成以後の製品マスター作成費用については、
資産に計上している企業と、金額に重要性がないという判断で費用処理している企業があり会計処理が異なります。
A 自社利用目的ソフトウェア
「将来の収益獲得効果」や「費用削減効果」が資産性の判断基準となりますが、
恣意性が入りやすいと言われています。
通常、企業は収益獲得効果・費用削減効果の無いものには投資しないと考えられており、
実質的には研究開発費として費用に処理されずに資産計上される傾向が多いとみられています。
B 複数目的で使用するソフトウェア及び使用目的を転用した場合の会計処理
ソフトウェアを複数の目的で使用する場合とは、
・ASP型サービスを提供しながら、当該ソフトウェアを販売するケース
・自社利用目的で開発したソフトウェアを
販売用やASP型サービスとして提供することによって収益を獲得するケース
・販売目的で開発したソフトウェアを自社で使用するケース など
また、販売目的で開発したソフトウェアについて販売を中止し、自社で利用するために用途を変更する場合など
もあるが、こうした複数目的で使用するケースや用途変更のケースに関する会計処理の規定がありません。
このため、実務上、会計処理が統一されていません。
3.会計基準の遵守のために、実務上多大な作業負担を強いられるケースが、
販売用ソフトウェアの償却計算において生じています。
販売用ソフトウェアは、販売本数、販売収益に基づいた償却が行われています。
しかしながら、販売本数の見直しが必要なことや均等償却額との比較が必要なことなどから、
多数の販売用ソフトウェアを保有する企業にとっては、
毎期、償却計算の見直し作業が求められることとなり、実務上多大な負担となっています。
ソフトウェアの資産計上と償却方法が検討のポイントとなります。
ソフトウェアを巡る新たな取引の将来的な課題
ソフトウェアの「知的財産」としての価値に着目すべきではないかという気運が高まっています。
ソフトウェアの価値は、
ソースコード自体ではなく、ビジネスにどのような役割を果たすのかにより価値を見出すことができます。
しかし、その価値の測定は、現行の取得原価主義会計の下では、商取引上のベンダーとユーザーとの対価が基本となります。
「研究開発費等に係る会計基準」に従えば、
将来の収益獲得や費用削減が確実であると認められる場合には、
ユーザー側で発生した人件費等もソフトウェアの取得の対価に含めることができます。
資産に計上できるのは発生した人件費相当の金額とされ、それ以上の価値については資産計上が認められていません。
システムの要件定義に始まって、ソフトウェアの開発、テスト、検収に至るまで、
ベンダーとユーザーは「協働」して作業を進め、費消されたコスト以上の価値を生み出している可能性 は否定できません。
当該超過部分の価値を資産としてどう認識していくのか、またその価値の説明の基礎をどこに求めていくのかといったこと
については、「知的財産」に関する将来的な議論の中での検討が必要と考えられます。
会計基準による対応
以下の事項に関しては、会計基準によって具体的な会計処理の明示が必要と言われています。
1. 市場販売目的ソフトウェア、自社利用ソフトウェア、ASP型サービス等が、 同一のソフトウェアによって
使用されるケースや用途が変更されるケースについての会計処理が明確に規定されていません。
資産計上の範囲や減価償却方法については、各社が独自の解釈に基づいて会計処理を行っています。
同一の会計処理が継続して行われ、かつ、恣意性を排除するためにも会計処理として規定されること
が必要と考えます。
2. ソフトウェアの販売権、改変権といったソフトウェアの権利の一部が売買されるケース
@ 取得時の資産計上についての考え方
A 計上科目あるいは取得後の減価償却期間についての考え方
B 売却側の会計処理としては、
売却した権利と残存する権利との間でのコストの按分計算についての考え方 など
いくつかの点で考え方の整理と具体的な会計処理の明示が必要と考えます。
会計基準の運用・判断基準での対応
個別の判断が企業に任せられている事項については判断基準を定め、
資産計上と減価償却方法に対する恣意性を可能な限り排除することが必要と考えます。
1.研究開発が「終了」となり、資産計上へ移行する際の判断基準
@ ソフトウェアの機能一覧の明確化
開発するソフトウェアの機能を明確にした上で開発稟議の承認を受け、 開発成果と対比することによって
研究開発の「終了」の判断における恣意性を低減させる。
A 社内での会議体や稟議などによる承認
・ 開発稟議段階で承認された機能が動作可能な状態になった時点で、
製品性についての判断会議や判断稟議を実施します。
・ 販売計画については、過去の事例や他社の動向など客観的な資料を多用し、
十分な検討を行った上で、研究開発の「終了」を承認します。
2.将来の「収益獲得」、「費用削減効果」についての判断基準
@ 収益獲得の判断
社内承認に基づく意思決定により判断します。
承認の際には「事前のマーケティング活動」、「営業活動による販売予測」、
「同種製品の過去の販売状況」等が参考になると思われます。
A 費用削減効果の判断
・費用削減の確実性についても収益獲得の場合と同様に社内承認に基づく意思決定により判断する。
・人員削減や転用計画等の社内の意思決定によって実行されるような費用削減効果については、
具体的な計画や社内承認の有無などによって実行可能性を検討した上で効果を判断する。
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ナビゲーション ソフトウェアを巡る新たな取引の発生について記載しております。