不適切な「検収」による売上の早期計上
現状及び問題点
現行のソフトウェア業の検収は、
開発の工程ごとに成果物をユーザーに納品し、その成果物をユーザが「検証」・「検収」を経ることが一般的な方法です。
しかしながら、
1.「検収」と「検収書の入手」が混同され、検収書を入手することが「検収」の目的となっています。
ベンダーとユーザーの間で、機能・性能について、契約どおりの要求水準を満たしているか否かの確認が
取れていないことがあります。
この結果、ユーザーとのトラブルに発展するケースが少なくありません。
2.収益を計上する場合には、検収書の入手という形式的要件だけではなく、
ユーザーが機能・性能を含めて確認するという実質的な要件を満たす必要があります。
適切な「検収」のあり方が検討のポイントとなります。
会計基準による対応
収益認識の基準として検収に着目する場合、検収についての具体的な指針がないため、
不適切な検収により売上計上が意図的に操作されてしまう可能性があります。
そのため、収益が実現したと認めるための具体的な検収の基準を会計基準において明確化することが必要である。
具体的には以下のように、会計基準において明確化することが望ましいと考えらます。
1.「収益の実現」を具体化するために満たすべき要件
@ 契約で定められた役務提供の完了(契約書に定められた納品物の納品完了、プログラムプロダクツの検査合格)
※ 契約に定められた納品物としては例えば次のようなものを言います。
・システム仕様作成業務:「システム仕様書」CD-ROM等の媒体に保存したもの。
・ソフトウェア作成業務:「ソフトウェアのプログラム」、「検査仕様書」、「検査成績書」、
「操作説明書」等をCD-ROM等の媒体に保存したものをいいます。
※ 納入されたCD-ROM等はそれ自体に価値があるのではなく、検査合格したソフトウェアと同じ内容のものが
記録されていることが重要です。従って、ソフトウェアの検査合格を完了しなければ、
納品物の納品完了とはならないことに留意する必要があります。
また、納品物の納品完了、ソフトウェアの検査合格によって、有形の媒体としては「所有権の移転」、
ソフトウェアについては「ソフトウェアプロダクツの使用権許諾の開始」といった、
法的権利を確定させることが可能となります。
A 検収書等、ユーザーへのソフトウェアの引渡しと仕様・性能に関するテストの完了を確認できる書類の入手する
必要があります。
B 契約通りの代金請求が可能であり、かつ回収の見込みがあることが必要です。
2.収益計上時に必要な書類
契約書、検収書等の書類を用意することが大事です。
内部統制での対応
1.検収書に記載すべき事項
検収日、検収した会社の会社印もしくは検収権限者の自署押印、検収対象物、契約時に合意した要求水準を
満たしていることを確認した旨など。
なお、検収書はユーザーの検収権限者より入手することが必要です。
2.検収及び検収書を補完するために実施することが望ましい事項
@ ベンダーの作業者とは独立した品質管理担当者による、
成果物の仕様・性能チェックと一連の品質検査工程をドキュメントとして残します。
A 「仕様書」、「テスト報告書」、「稼働確認書」のような成果物の存在
B 要求品質を満たしていることを証する書面の作成、
C ユーザーへの書面交付の徹底。
3.モニタリングの実施
@ 売上計上後、長期間未請求となっている案件の有無及び内容検討。
A 定期的に売掛金の残高確認を実施。
B 売掛金の滞留状況をチェックし、滞留理由の把握と回収可能性を検討。
C 「見積書」、「契約書」と売上計上データの整合性をチェックし、不整合の有無、及び内容検討。
ユーザにおける対応
1.ユーザー都合による「検収書」の早期発行や意図的な検収遅延は、
ユーザーにおける架空資産、簿外資産の計上といった不適切な会計処理につながりやすくなります。
ユーザーにおいても内部管理体制を監督強化していくことが必要となります。
2.発注担当者と検収担当者の職務分掌を行い、
「契約書」と、「納品書」、「仕様書」、「稼動報告書」、「テスト結果報告書」等を照合する。
3.発注残高管理を徹底し、長期間未検収となっている案件の有無、及び内容検討。
4.現物と帳簿との棚卸の実施。
※ ベンダーとユーザー間での、品質に対する共通認識により不適切な検収を防止します。
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